コラム
助成金の活用を考え始めたものの、何から手をつければよいのか分からないという声を、経営者の方から数多くいただきます。助成金申請は書類を一枚提出すれば終わるという性質のものではなく、先に計画を立てて届け出たうえで実際の取り組みを行い、その結果を証明してから支給を申請するという段階を踏むものが大半を占めます。この順序を知らないまま設備を導入したり制度を先に始めてしまったりすると、取り組みの内容そのものは良いものであっても対象外と判断されてしまうことがあります。
この記事では特定の制度の細かな要件には踏み込まず、助成金申請という手続きの全体像と、実務でつまずきやすい箇所を順に整理してまいります。なお助成金の要件や金額は年度によって内容が変わるため、実際に申請される際は必ず最新の公募要領をご確認ください。制度によっては受付期間の途中で取扱いが変更されることもありますので、着手の直前にもう一度確認しておくと安心です。

まず整理しておきたいのが、助成金と補助金の考え方の違いです。一般に助成金は、定められた要件を満たしていることを示せば申請できるという性格を持ち、雇用や労働環境に関わる取り組みを対象とするものが多く見られます。これに対して補助金は、政策目的に沿った事業計画の内容を審査したうえで採択する形式が中心であり、予算枠や採択件数の制約を受けることが一般的です。
ただし名称と実際の性格が必ずしも一致しない制度もありますので、名前だけで判断するのは避けたほうが安全です。助成金であっても要件を満たさなければ支給されませんし、審査の過程で追加の資料を求められることも珍しくありません。どちらであっても、公募要領に書かれている定義を自社の状況に当てはめて読むという作業が出発点になります。
助成金申請というと申請書の作成をイメージされる方が多いのですが、実務の重心はむしろその手前にあります。多くの制度では、就業規則や労使協定といった労務関係の書類が整っていることを前提として設計されているため、書類が未整備のままでは申請の土俵に立てないという状況が起こります。つまり申請の準備とは、自社の労務管理を制度の求める水準に合わせて整えていく作業とほぼ同じ意味を持ちます。
この点を負担と捉える方もいらっしゃいますが、助成金申請は負担ではなく組織を強くするための機会と捉えるべきものです。規程を整え、記録の残し方を見直す過程そのものが、労務リスクの低減や従業員の定着につながっていきます。
制度を探す前に、自社の現状を書き出しておくと検討が早く進みます。従業員数と雇用形態の内訳、就業規則の有無と最終改定の時期、賃金台帳や出勤簿の管理方法、社会保険の加入状況、直近で予定している設備投資や採用の計画といった項目が代表的なところです。これらが整理されていれば、どの方向の制度が候補になるのかという当たりをつけやすくなります。
制度によって細部は異なりますが、多くの助成金は大きく三つの段階で構成されています。第一に計画の届出として、これから行う取り組みの内容と期間を所定の様式で提出します。第二に計画の実施として、届け出た内容のとおりに設備を導入したり制度を運用したりします。そして第三に支給申請として、実施した事実を裏づける資料を添えて支給を求めるという流れです。
重要なのは、この順序が入れ替えられないという点です。実施が先で届出が後という形は認められないことが多く、良かれと思って先に動いた結果として対象外になる事例が実際に起きています。取り組みの内容を思いついた段階で、まず届出が必要かどうかを確認するという習慣を持っておくと安全です。
| 段階 | 主にやること | 注意しておきたい点 |
|---|---|---|
| 情報収集 | 候補となる制度を絞り込み、公募要領を読み込む | 年度で内容が変わるため最新版を参照する |
| 計画の届出 | 取り組みの内容と期間を所定の様式で提出する | 受理されるまで着手できない制度がある |
| 計画の実施 | 届け出たとおりに導入や制度運用を進める | 実施の記録と証拠書類を同時に残す |
| 支給申請 | 実施結果と支払いの事実を示す資料を提出する | 提出期限が短く設定されることがある |
| 審査と支給 | 審査を受け、結果の通知を待つ | 不支給となる場合もあり支給は保証されない |
表のとおり、事業者が主体的に動く場面は前半に集中しています。後半は審査を待つ時間が長くなりますので、その間の資金繰りをどう組み立てるかという視点も併せて持っておきたいところです。
助成金申請で最も相談が多いのが、この着手前の手続きに関するものです。設備の発注や契約、制度の就業規則への反映、従業員への周知といった行為が「着手」とみなされる場合があり、届出前にこれらを済ませてしまうと対象から外れることがあります。どこからが着手にあたるのかは制度ごとに定義が異なりますので、判断に迷う場面では自己判断で進めず、申請先の窓口や専門家に確認したうえで動くことをおすすめします。
先ほど触れたとおり、順序の誤りは後から取り返しがつきにくい失敗です。特に設備投資を伴う取り組みでは、見積もりを取った時点なのか発注した時点なのか支払った時点なのかによって扱いが変わることがあります。社内で複数の担当者が動いている場合は、誰がいつ何を発注したのかを一元的に把握できる状態にしておくと、こうした行き違いを防ぎやすくなります。
原則として、10名以上の事業所には就業規則の作成義務がありますが、それ以下の規模であっても助成金申請には規則の整備が必要になる場面が少なくありません。あわせて労使協定や賃金台帳、出勤簿、雇用契約書といった書類の整合性も確認されます。就業規則には記載があるのに実際の運用が異なっている、といった食い違いは指摘を受けやすい箇所です。
書類が未整備であること自体は珍しいことではありませんし、その場で作成すれば前に進めます。当事務所でも、申請と並行して就業規則を新規に作成したり一部を改訂したりする支援を数多く行っています。
取り組みそのものは行ったのに、それを証明する資料が手元にないというケースもよく見られます。研修であれば受講記録や学習状況の管理が重要なポイントとなりますし、制度の導入であれば従業員への周知の事実や運用開始日の記録が求められます。実施しながら記録を残すという意識を、担当者の間で最初に共有しておくことが大切です。

就業規則は労働条件を明文化した社内の基本ルールであり、助成金申請の場面では制度の内容が実際に社内で運用されていることを示す資料として扱われます。そのため、届け出た取り組みの内容と規則の記載が一致しているかどうかが確認されます。古い規則をそのまま使い続けている場合には、法改正への対応が済んでいるかという点も含めて見直しの機会になります。
就業規則だけを整えれば足りるわけではありません。設備投資を伴う制度であっても、助成金申請では就業規則や労使協定の整備が求められることがあります。賃金の支払い実態が台帳と一致しているか、労働時間の記録が実態を反映しているかといった点も、審査の過程で参照される情報です。日常の労務管理と申請書類はつながっているという前提で準備を進めると、後戻りが少なくなります。
制度を規則に書き込んだだけで、実際には誰も使っていないという状態は望ましくありません。審査の観点からも、運用の実績が確認できるかどうかは重要な要素になります。当事務所では形式的な制度導入だけでなく、実態として機能する仕組み作りを助成金申請と並行してトータルでご支援しています。制度が現場で使われてはじめて、人材の定着という本来の目的にもつながっていきます。
助成金の種類によりますが、事前の計画提出から実際の受給までには半年から1年以上のスパンを要するものが多いため、早めの準備と計画的なスケジュール管理が不可欠です。申請したその月に入金されるという性質のものではありませんので、事業計画の中で助成金をあてにする場合には、時間軸のずれを織り込んでおく必要があります。
多くの制度は、事業者が先に費用を支出し、その実績に対して後から支給される仕組みです。したがって、支出のタイミングと入金のタイミングの間には相応の期間が空きます。設備投資の規模が大きいほどこの影響も大きくなりますので、資金計画については早い段階で金融機関や顧問の専門家とも共有しておくと安心です。なお資金調達や税務上の取扱いに関する判断は税理士など各分野の専門家にご相談ください。
助成金の要件や金額、受付期間は年度によって変わります。前年に利用した制度が翌年も同じ条件で使えるとは限りませんし、コースの新設や統合が行われることもあります。過去の情報を前提に準備を進めていたところ、実際の要領では条件が変わっていたという行き違いを避けるためにも、着手のたびに最新の公募要領を確認するという手順を必ず挟んでください。
助成金は申請すれば必ず受け取れるものではありません。要件を一つでも満たさない場合に不支給となる点が最大のハードルであり、書類が揃っているかどうかだけでなく、実態が要件に合致しているかどうかが問われます。支給を前提とした説明を目にすることがあるかもしれませんが、審査がある以上、結果が確定するまで受給は保証されないという理解で進めるのが健全です。
要件を満たしていないことを承知のうえで申請することは、結果として事業者ご自身の不利益につながります。不支給となれば準備に費やした時間が戻ってこないだけでなく、内容によっては返還や以後の申請への影響が生じることもあります。実態と異なる書類を整えるのではなく、実態のほうを要件に合わせて整えるという順序で考えることが、遠回りに見えて最も確実な進め方です。
要領の記載が自社の状況にどう当てはまるのか判断がつかない場面は、実務では頻繁に発生します。そうしたときは推測で進めず、申請先の窓口や社会保険労務士に確認したうえで次の行動を決めてください。確認に要する時間よりも、判断を誤ってやり直しになる時間のほうがはるかに大きくなります。
雇用や労働環境に関わる助成金の申請書類の作成と提出代行は、社会保険労務士が担う業務範囲に含まれます。あわせて就業規則の作成や改訂、労使協定の整備、社会保険や労働保険の手続き、日常の労務相談といった領域も一体で対応できます。助成金申請に必要となる労務管理体制の整備まで含めて相談できる点が、専門家に依頼する実務上の利点です。
一方で、受給した助成金の会計処理や税務上の取扱いについては税理士の領域であり、契約や紛争に関する法律相談は弁護士の領域です。社会保険労務士がこれらの判断を行うことはできませんので、必要な場面では各分野の専門家におつなぎするか、顧問の先生にご確認いただく形になります。どこまでを誰に相談すべきかがはっきりしていると、検討そのものが速く進みます。
申請の代行や実務支援だけでなく、情報提供のみのご利用も可能です。自社で申請を進めたいけれども制度の読み解きだけ助けてほしい、というご相談も承っています。どの範囲までご自身で行い、どこから任せるのかは、社内の体制や繁忙の状況に合わせて決めていただければ十分です。
人事労務管理と助成金申請を別々の窓口で管理することは、情報の乖離や申請漏れのリスクを伴います。当事務所ではこの二つを分けずに、一気通貫のサポートを提供しています。労務相談、社会保険手続き、就業規則作成、労使協定整備、助成金申請までを包括的に対応できる体制です。業務面では助成金申請に強い社労士事務所として、累計受給額は15億円を突破しました。
最も手厚いサポートである顧問会員プランでは、日常的な労務相談から社会保険の手続き、そして戦略的な助成金申請までをすべて一括してお引き受けいたします。助成金申請に伴う就業規則の一部改訂などもプランに含まれているため、法令に則った適切な手続きをワンストップで完了させることが可能です。助成金会員では、助成金申請に特化したサポートを行います。創業期から成長期、そして安定期に至るまで、事業者様の状況に応じた助成金申請や労務整備をご支援しております。
現状を分析したうえで、まずはヒアリングを行い、最適なプランを無料で診断させていただきます。無理な勧誘等は一切ございませんので、安心してご相談ください。無料相談は完全予約制でオンライン面談にも対応しているため、忙しい経営者の方でも負担なくご利用いただけます。お問い合わせフォームは24時間年中無休で受付中です。
助成金の活用と労務管理の関係については、助成金活用による事業拡大と強固な労務管理の実現でも詳しくご紹介しています。あわせて実践的労務改善と事業拡大のロードマップもご覧ください。

A 取り組みの内容を検討し始めた段階でご相談いただくのが理想です。多くの制度は着手前の届出を前提としているため、発注や制度の運用開始よりも前にご連絡いただけると選べる選択肢が広がります。すでに動き出している場合でも、現時点で使える方法がないかを一緒に確認いたします。
A 制度によっては就業規則の提出が求められるため、未作成のままでは進められない場合があります。現時点で作成していなくても、当事務所が申請と並行して最適な内容で新規作成いたしますので、まずはご相談ください。既存の規則がある場合は、内容が現行法令や取り組みと整合しているかを確認いたします。
A いいえ、助成金には審査があり、要件を満たさない場合には不支給となることがあります。支給を保証できるものではありませんので、要件を一つずつ確認しながら準備を進めることが大切です。要件や金額は年度によって変わりますので、必ず最新の公募要領をご確認ください。
A 受給までの期間が長くなることは、資金繰りの面にも影響します。先に費用を支出して後から支給を受ける流れになる点も踏まえてご計画ください。
A 自社の課題に応じて複数の制度を候補として比較検討すること自体は可能です。ただし同じ取り組みや同じ経費に対して重ねて申請できるかどうかは制度ごとの定めによりますので、個別に確認が必要になります。ご相談の際に自社の状況を伺い、実現できる組み合わせをご提案いたします。
A 会計処理や税務上の取扱いは税理士の業務範囲となりますので、当事務所からは判断を申し上げられません。顧問の税理士の先生にご確認いただくか、必要に応じて専門家へおつなぎいたします。労務に関する部分は当事務所で一貫して対応いたします。
A はい、申請の代行や実務支援だけでなく、情報提供のみのご利用も可能です。ご自身で申請を進めたい事業者様に対して、制度の読み解きや必要書類の考え方をお伝えする形でもご支援しています。
助成金申請は、計画を届け出てから実施し、その結果をもって支給を申請するという順序で進むものが大半です。着手のタイミングを誤らないこと、就業規則をはじめとする労務書類を整えておくこと、支給まで時間がかかる前提で資金計画を立てておくことという三点を押さえておけば、大きなつまずきは避けやすくなります。審査がある以上は支給が保証されるものではありませんが、実態を要件に合わせて整えていく過程そのものが組織の基盤を強くしていきます。
従業員数と雇用形態、就業規則の有無と改定時期、賃金や労働時間の記録方法、今後の投資や採用の予定を書き出すところから始めていただくと、その先の検討がぐっと具体的になります。制度の内容は年度によって変わりますので、実際に動かれる際は必ず最新の公募要領をご確認いただき、判断に迷う点があればお気軽にお声がけください。
アサンテ社会保険労務士事務所では無料相談を承っています。記事の内容でご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。
お電話:03-6300-4652 公式サイト:asante-sharoshi.com


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